野田宇太郎顕彰会 文学散歩のご報告
6月10日(火)に野田宇太郎顕彰会主催の「新緑の山口 中原中也の故郷を訪ねる文学散歩」が開催されました。 当日は、心配されたお天気も何とか持ちこたえ、散策中は雨に降られずに帰ってくることができました。 ご参加いただいた方は14名。7時30分に小郡市立図書館を出発し、西鉄小郡駅を経由して、山口市へと向かいました。 |
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予定よりやや早く、10時に山口県立美術館に到着しました。 |
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こちらでは、現在、 国際浮世絵学会創立50周年記念「大浮世絵展」 〈平成26年5月16日(金)〜7月13日(日)〉が開催中です。 喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳といった 名だたる浮世絵師の作品や名品が数多く展示された 大規模な展覧会です。 |
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浮世絵は、先日開催された当館の企画展 『耽美主義文学運動「パンの会」―不可思議国の建設―』〈平成26年2月8日(土)〜4月20日(日)〉 と関わりがあります。 「パンの会」とは、明治40年代前半、東京で展開された耽美主義運動のことです。 「耽美主義」とは、作品の価値をそこに込められた思想などでなく、そのものの持つ美を追求するというものです。 この「パンの会」のメンバーに大きな影響を与えたのが耽美主義の画家ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834〜1903)です。 ホイッスラーには、日本美術の影響が指摘されており、浮世絵から着想を得たと思われる作品がいくつもあります。 今回は、「パンの会」の始まりとも言える浮世絵に焦点を当て、ここから文学散歩のスタートとなりました。 こちらの「大浮世絵展」は、とても人気の展覧会で、平日にも関わらず、多くのお客様でにぎわっていました。 ご参加いただいた皆様も、素晴らしい浮世絵作品に感動されていらっしゃったようでした。 |
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「大浮世絵展」を鑑賞した後は、湯田温泉街へ向かいました。 昼食後、次の目的地、今年、開館20周年を迎えた中原中也記念館に到着しました。 中原中也記念館では、現在、 常設テーマ展示 「中也 愛の詩―いとしい者へ」 〈平成26年2月16日(日)〜平成27年2月15日(日)〉と 企画展「中原中也記念館の20年」 〈平成26年2月16日(日)〜7月27日(日)〉 を開催中です。 こちらでは、学芸員の方に解説をしていただいた後、展示を鑑賞しました。 直筆原稿や当時の詩集などが展示され、 中也の愛情深い一面に触れることができ、 まさに中原中也の世界に浸れる素敵な時間でした。 |
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記念館の敷地には、中原中也誕生之碑があります。 碑の後ろのカイヅカイブキの木は中也が生まれた頃から あるものだそうです。 |
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中原中也記念館のすぐ近くには井上公園があります。 こちらには中原中也の詩碑や種田山頭火の句碑があります。 写真は中也の友人であった評論家小林秀雄の筆による、 中原中也の「帰郷」の詩碑です。 |
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野田宇太郎は、 『野田宇太郎文学散歩 第21巻(上) 山陽文学散歩』(文一総合出版) で、この井上公園にも訪れています。 野田宇太郎は、まず井上馨(1835〜1915)の像の前に立ち、 山口の歴史に思いを馳せました。 野田は、『文学散歩』の中で、中也や山頭火について触れた後に 「このような反俗的生涯の人間を破滅型とも呼ぶらしいが、 明治維新に政治の中枢になったような多くの人物を輩出した山口地方に、 近代以降になるとこのような破滅型の人物が多く出ているのも 風土的関係なのかもしれない。」 と、述べています。 井上公園は、山口の風土が生んだ偉人と詩人の碑がある、 まさに山口らしい場所なのかもしれません。 |
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井上公園の後は、各自自由に湯田温泉街を散策しました。 湯田温泉街では、あちこちで中原中也や種田山頭火と 関わりのあるものに出会うことができます。 こちらは、中原中也ゆかりの旅館、西村屋です。 西村屋の葵の間で中也は、結婚式を挙げました。 現在は中原中也賞の選考会が、葵の間で毎年行われているそうです。 |
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散策の途中、こんなマンホールも見つけました。 中原中也の肖像でおなじみの帽子です。 |
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こちらは、種田山頭火の句です。 お酒が大好きだった山頭火にふさわしいデザインだと思います。 |
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山口らしいデザインのマンホールです。 山口の誇りを感じます。 |
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自由行動では、お土産を見られたり、温泉街の雰囲気を 楽しみながら散策された方もいらっしゃったようです。 16時前に湯田温泉街を後にし、18時過ぎに無事 小郡市に戻ってきました。 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。 |
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野田宇太郎文学資料館では、 「山口の文学散歩(仮)」として、 山口の文学をテーマに今年度の企画展を計画しております。 詳細が決まりましたら、お知らせいたしますので、ぜひご来館下さい。 |