7月の展示替えを行いました<その@>

7月4日から、展示が一部替わりました。

中央ステージと展示ケース、壁面です。

7月は、「大正浪漫―歌人と装幀の世界」と題して、主に大正時代に活躍した歌人の作品を装幀にスポットを当て展示しています。

大正時代という独特の空気の中で生まれたモダンなデザインは、今見ても色褪せることなく活き活きとしています。

今回は、まず、中央ステージと展示ケースのご紹介をします。

中央ステージでは、野田宇太郎の直筆原稿

「解説 与謝野晶子―生涯と文学の管見」を

展示しています。

木下杢太郎が評価した歌人が與謝野鉄幹であることから、

杢太郎を尊敬する野田も鉄幹の妻、與謝野晶子について

解説を書いたのだと思われます。

こちらの展示ケースでは、大正時代の女流歌人として、

柳原白蓮(やなぎわらびゃくれん)、

九條武子(くじょうたけこ)、

原阿佐緒(はらあさお)

の作品をご紹介しています。

この3人は三閨秀(けいしゅう)歌人として、

その美貌と才能を謳われていました。

閨秀とは、学問や芸術に優れた女性、才能豊かな女性を指す言葉です。

柳原白蓮(1885〜1967)、本名は子(あきこ)。

NHKの連続テレビ小説「花子とアン」の登場人物、

葉山蓮子のモデルとなった歌人です。

大正三美人の1人で、その美しさと出自ゆえに

波乱万丈の生涯を送った人でもありました。

なお、この肖像は、白蓮の第一歌集『踏絵』に収載されているものです。

こちらが、『踏絵』(大正4年、竹柏会)です。

この本は、装幀・挿絵を竹久夢二が手掛けています。

表紙もしっかりした作りで、かなりの費用がかかっています。

その出版費は、夫で炭鉱王と呼ばれた伊藤傳右衛門が負担しました。

表紙の「IHS」のマークはイエズス会(カトリック男子修道会)の紋章です。

この文字はイエス・キリストを表すとされています。

『踏絵』の挿絵です。

キリストの「磔刑」の場面です。

足元にひざまずく女性(マグダラのマリア)は、

いかにも夢二らしい細面の美人に描かれています。

九條武子(1887〜1928)は、佐佐木信綱に師事し、

柳原白蓮とも親交のあった歌人です。

武子も、大正三美人の1人に数えられ、

その美貌で注目を集めました。

歌だけでなく教育活動、負傷者や孤児の救済事業にも尽力した人物です。

九條武子の第一歌集『金鈴(きんれい)』(大正9年、竹柏会)です。

革に金色の孔雀の模様が映えて、とても美しい本です。

こちらは、初版本です。

同じ『金鈴』ですが、2年後に出版された物です。

初版本と同じ模様がケースに印刷されています。

上品ですが、こちらの方は、柔らかな色合いで、

可愛らしさも感じられる装幀だと思います。

原阿佐緒(1888〜1969)、本名浅尾。

与謝野晶子に師事したのち、斎藤茂吉、島木赤彦らの指導を

受けています。

大正時代の「アララギ」の女流歌人の代表的存在と

なりましたが、その後、恋愛での騒動が発端となり、

歌壇から忘れ去られていった不遇の歌人でもあります。

第一歌集『涙痕(るいこん)』(大正2年、東雲堂)です。

手のひらほどの大きさの小さめの本ですが、表紙は厚く、

丈夫な作りです。

ひっそりと描かれた百合の絵は、『涙痕』というタイトルに

ふさわしいものです。

この『涙痕』には、吉井勇(1886〜1960)が序歌を寄せています。

次回は、壁面の展示作品をご紹介します。

また、今回ご紹介した本以外にも、展示ケースでは、魅力的な装幀の本を展示しております。

ぜひご来館下さい。