1月の展示替えを行いました
1月6日(火)から中央ステージ、展示ケース、壁面展示スペースの展示が替わりました。 今回のテーマは「新春 浮世絵特集」です。 浮世絵に関する本を御紹介するとともに、橋口五葉の「髪を梳く女」も特別展示します。 浮世絵関連の本は装幀も凝っていることが多く、本そのものが一つの浮世絵作品のようになっていて、 見るだけでも楽しめる展示となっています。 |
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中央ステージでは、毎月、野田宇太郎の直筆の原稿を 展示しているのですが、今回は、1月なので、趣向を変えて 野田宇太郎宛の年賀状を展示しています。 差出人は、左上から時計回りに、石井柏亭(1882〜1958)、 森於莵(1890〜1967)、日夏耿之介(1890〜1971)、 牛島春子(1913〜2002)です。 |
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石井柏亭(いしいはくてい)の年賀状〔昭和29(1954)年〕は、印刷なのですが、さらっと描かれた中にも、 確かな技術とセンスが光っており、さすがというところです。 版画家でもあり洋画家でもあった石井柏亭らしい年賀状です。 森於莵(もりおと)の年賀状〔昭和38(1963)年〕は、すべて手書きです。 森於莵は、森鴎外の息子で、父と同じ医者であり、随筆家でもありました。 野田宇太郎は、森鴎外(1862〜1922)の遺言碑などの建設にも関わっていたので、 その中で森於莵との親交がありました。 日夏耿之介(ひなつこうのすけ)の年賀状〔昭和39(1964)年〕には、昨年野田に会えなかったのことへの謝罪と 新年の挨拶が丁寧な文章で書かれています。 牛島春子の年賀状〔昭和38(1963)年〕は、とてもシンプルで大胆です。 牛島春子は油絵も嗜んでいましたが、彼女らしい勢いのある感じがここにも表れています。 |
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こちらは、橋口五葉(1881〜1921)の「髪梳ける女」〔大正10(1920)年〕 です。 木版画で、橋口五葉の代表作のひとつです。 橋口五葉は、鹿児島市の生まれで、日本画を学んだ後、洋画に 転向します。 夏目漱石の『吾輩ハ猫デアル』をはじめとして、装幀家としても 活躍しました。 彼は、浮世絵の研究家でもあり、復刻にも取り組みました。 この作品では、柔らかな肌の色合いと細かく表現された女性の 髪が印象的で、質感までも伝わってきます。 |
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当館では、通常、絵そのものの展示はあまり行っていないのですが、今回は「浮世絵」特集ということで、 壁面スペースに展示しています。 今回展示しているのは、悠々洞出版から刊行されたもので、限定部数のうちの99番の番号がついています。 |
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小島烏水(こじまうすい)(1873〜1948) 『浮世繪と風景画』〔大正3(1914)年、前川文榮閣〕です。 左がケースで、右は本ですが、どちらにも美しい浮世絵が あしらわれています。 |
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藤懸靜也(ふじかけしずや)(1881〜1958) 『浮世繪』〔大正13(1924)年、雄山閣〕です。 この本の装幀は、日本画家の鏑木清方(1878〜1972)が手掛けました。
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この装幀について藤懸靜也は解説を書いています。 それによると、すでに前年には鏑木清方によって図案ができあがり、木版画も摺りあがっていたのですが、 関東大震災〔大正12(1923)年9月1日〕のために、それは失われてしまったらしく "如何にも惜しいことをした"と残念がっています。 そのため、"更に畫想をねつて書き上げられた"ものが、この装幀だとしています。 ケースは、女形の川菊之亟の道成寺(*1)の絵で、タイトルや著者名も清方の手によるもので "畫風と書態との調和にゆるみがない"と、こちらも大変気に入っている様子がうかがえます。 表紙は鈴木春信風の藤娘(*2)で、装幀を評して"光彩陸離たる觀がある"と褒め称えています。 一度は震災によって出版を諦めかけてしまった本だからこそ、完成したときの著者の喜びが伝わってくるようです。 (*1)道成寺…能、歌舞伎、浄瑠璃の演目のひとつ。安珍・清姫伝説をもとにしたもの。 (*2)藤娘…歌舞伎、日本舞踊の演目のひとつ。 |
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こちらも藤懸靜也著の『浮世絵の研究』〔昭和18(1943)年、雄山閣〕です。 実は、この本は上・中・下の三冊組で、カバーを取ると、下は全部 同じデザインの赤富士が描かれています。 裏まで同じ続きの絵柄があるので、一冊を裏返して、 表表紙と裏表紙でくっつけると、こんな風に一枚の赤富士の絵が 完成します。 |
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藤懸靜也は、日本美術の研究者で、東京帝国大学(現在の東京大学)の教授になった人物です。 『浮世絵の研究』は、実はとても厚い本で一冊が3.5cmもあります。 浮世絵の歴史や絵師について詳しく触れ、図も多く掲載されています。 この本が戦時中に出版されたということを考えると当時の研究書としては破格の豪華な本と言えるかもしれません。 |
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ここでご紹介したものの他にも、浮世絵に関する貴重な本を展示しています。 新年に、江戸の華やかな文化に思いを馳せてみられてはいかがでしょうか。 皆様のお越しをこころよりお待ち申し上げております。 本年も野田宇太郎文学資料館をよろしくお願いいたします。 |