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野田宇太郎文学資料館企画展 「蒲原有明―近代詩の先駆者―」が始まりました!

野田宇太郎文学資料館企画展 「蒲原有明―近代詩の先駆者―」開催中!

8月20日(土)より野田宇太郎文学資料館企画展「蒲原有明―近代詩の先駆者―」が始まりました。

展示室入口の様子.JPG

展示室入口の様子

 日本の象徴詩を完成させた詩人・蒲原有明(かんばら ありあけ、1876~1952)は、明治時代の後期に詩壇で活躍しました。蒲原は北原白秋や三木露風をはじめとする後の詩人たちにも大きな影響を与えました。
 しかし、蒲原は、大正時代に入る頃から、次第に詩壇から遠ざかるようになります。多くの人の記憶から蒲原の名が消えかけていた頃、蒲原の作品を再び世に出したのが野田宇太郎でした。

 野田が蒲原と出会ったのは、戦後間もない頃です。当時、戦争で家を失った蒲原は、川端康成と同じ家に住んでいました。川端を訪ねた野田が偶然、川端から蒲原のことを聞いたのが、二人の交流の始まりでした。この時、野田は、蒲原に作品を書くように勧めます。そして、野田の編集雑誌「藝林閒歩(げいりんかんぽ)」で、蒲原の自伝「黙子覚書(もくしおぼえがき)」が連載され、この作品は後に『夢は呼び交す』と改題されて出版されました。この作品によって、人々は蒲原有明が健在であることを知ったのでした。

 野田宇太郎文学資料館では、平成26年、27年に、蒲原有明に関する新資料を収蔵しました。今回の企画展では、野田が所蔵していた蒲原有明資料と新収蔵資料を合わせて展示し、詩人・蒲原有明の魅力とその業績をたっぷりとご紹介します。また、野田宇太郎と蒲原有明の親交の深さが伝わる手紙や野田の蒲原への想いが分かる資料もあります。

 さらに、特別企画として、講談社の月刊漫画雑誌「アフタヌーン」で「月に吠えらんねえ」を連載中の清家雪子(せいけ ゆきこ)先生に、今回の企画展のために作品を描き下ろしていただきました。
 「月に吠えらんねえ」は、近代詩の世界を独自の世界観で表現した作品です。登場人物は、実在の人物ではなく、あくまで近代詩歌俳句の作品イメージに命を吹き込み生まれた独自のキャラクターとされています。今回の描き下ろしは、「月に吠えらんねえ」の主人公「朔くん」と準主人公「白さん」が、蒲原有明作品のイメージから生まれた「有明先生」を訪ねる物語です。

「特別企画 清家雪子氏描き下ろし作品展示」コーナー.JPG

「特別企画 清家雪子氏描き下ろし作品展示」コーナー

 今回の作品の元になった「蒲原有明に帰れ」などもパネルにして展示していますので、そちらを読んでいただくとより作品を楽しむことができます。 難しい、とっつきにくいと感じられがちな近代詩の世界ですが、蒲原有明作品を理解する上で、とても分かりやすい現代詩への入口のような作品になっていますので、まずはこちらのコーナーで、少し気分を楽にして作品をご覧になられてはいかがでしょうか。

 今回の企画展は11月29日(火)までです。企画展中、展示する資料を時々入れ替える予定です。 9月10(土)、10月8(土)にはギャラリートークを開催します。11月19日(土)は、名古屋大学大学院教授、涌井隆先生による講演会も行います。 今後も随時企画展の情報を更新していきます。 貴重な機会ですので、ぜひ野田宇太郎文学資料館へお越しください。皆様のご来館をお待ちしております。