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常設展の展示替をしました ~「夏目漱石没後100年特集 漱石と『文学散歩』」~2016年6月

常設展の展示替をしました ~「夏目漱石没後100年特集 漱石と『文学散歩』」~

 6月7日(火)より常設展の一部を替えました。

 今年は、夏目漱石(なつめ そうせき、1867~1916)没後100年です。野田宇太郎は日本各地を巡りながら、多くの漱石ゆかりの地を『文学散歩』に書き残しています。今回は、野田宇太郎の文学散歩ともかかわりの深い夏目漱石を特集しています。
 中央展示コーナー、のぞきケース、壁面展示コーナーで、「夏目漱石没後100年特集 漱石と『文学散歩』」と題して展示しています。

 展示の中から、夏目漱石『こころ』[大正3(1914)年9月 岩波書店]をご紹介します。

 岩波書店といえば、現在は岩波文庫などで知られる大きな出版社ですが、大正3年当時は小さな古書店でした。創業者である岩波茂雄(いわなみ しげお、1881~1946)は、出版業への進出を考えて、漱石が朝日新聞に連載した「こころ」を出版させてほしいと頼みます。これが、岩波書店にとって最初の出版物となりました。

HP用野田2016.6.6(『こころ』).JPG

          夏目漱石『こころ』[大正3(1914)年9月 岩波書店](復刻版)

 『こころ』は、漱石自身が装幀しました。朱色の地に薄緑色の漢字があしらわれた表紙は、中国の美術品を好んで集めていたという漱石のセンスが感じられます。この字を書いたのも漱石ですが、手本に「石鼓文(せっこぶん)」の拓本が使われています。石鼓文とは、古代中国で出土した石碑に刻まれた文字のことです。また、表紙のタイトル部分には、古代中国の漢字字典『康熙字典(こうきじてん)』の「心」の項が貼り付けられています。
 このデザインは『漱石全集』(岩波書店)の表紙にも使われていますので、見たことがある方も多いのではないでしょうか。

 『こころ』の出版から2年後、漱石は胃潰瘍で急逝します。『文学散歩 5巻』(文一総合出版)で、野田は東京の雑司ヶ谷墓地を歩きながら、『こころ』の登場人物「先生」と「K」の死、そして執筆から2年後におとずれる漱石自身の死に思いをはせています。
 野田は『文学散歩』で、何度も漱石について書いていますが、その文章は詩人らしい感性にあふれています。今回は、壁面展示コーナーに『文学散歩』より文章を抜粋したものをパネルにして掲示しました。

HP用野田2016.6.6(壁面①).JPG

               (壁面展示コーナーの様子)

 この特集展示は、6月7日(火)から7月3日(日)までです。皆様のご来館をお待ちしています。