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常設展の展示替をしました~「ヨーロッパの旅と文学~野田宇太郎、ヨーロッパ写真展」~2018年1月

テーマ展示「ヨーロッパの旅と文学~野田宇太郎、ヨーロッパ写真展」

 明けましておめでとうございます。
本年も野田宇太郎文学資料館をどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、当館では、2018年1月5日から、常設展の一部を展示替えしました。今回のテーマは、「ヨーロッパの旅と文学~野田宇太郎、ヨーロッパ写真展~」です。

 野田宇太郎は昭和43(1968)年9月19日から10月17日までの約一ヵ月間、ギリシアをはじめとしてヨーロッパ各地11ヶ国を歴訪しました。この間、野田はバチカンで枢機卿にも会うなど、貴重な体験をしました。この旅は『ヨーロッパ文学の旅』〈昭和46(1971)年 毎日新聞社〉や詩集『昏ゆくギリシァ』〈昭和51(1976)年 潮流社〉、『羅馬の虹』〈昭和45(1970)年 芽起庵〉の出版へと結びつき、後の野田の文筆活動にも大きな影響を与えました。

 野田がヨーロッパに行ったのは、文学散歩の取材という側面が大きく、ヨーロッパの文学ゆかりの場所や少年遣欧使節の足跡をたどっています。野田は記録としてたくさんの写真を撮影しており、今回はヨーロッパで撮影した写真の一部をパネルにして展示しています。

IMG_3516.JPG 展示の様子

 当時、日本人が自由に海外旅行に行けるようになってから数年しか経っておらず、海外に行くというのは、とても大変なことでした。野田はこの貴重な機会を得、出かける前に入念な準備と予習をしたと語っています。ヨーロッパの写真は他の文学散歩の記録写真と比較しても現像した枚数も多く、異国の風景に興奮している野田の姿が写真から伝わってきます。

 また、中央展示ケースには、詩集『昏ゆくギリシァ』に収載された野田宇太郎の自筆詩稿「アテネはパンの匂ひがする」を展示しています。
 『昏ゆくギリシァ』は、野田がヨーロッパへ旅をしてから数年の時を経て出版されています。この理由を野田は『昏ゆくギリシァ』のなかの「覚え書」で以下のように記しています。

 "「昏ゆくギリシァ」はわたくしの昭和四十三年の夏から秋にかけてのヨーロッパ旅行の所産である。その記録は『ヨーロッパ文学の旅』として昭和四十六年に出版したが、同時にわたくしはヨーロッパ詩篇を書きたくなつてゐた。これが青年期であったらいきなり興奮の渦と共に詩から書き始めたらう。わたくしは沈静と客観の時を待つた。(後略)"

 野田は年月をかけて、ゆっくりとヨーロッパの旅を回想し、自分自身で納得できる詩を作ろうとしました。『昏ゆくギリシァ』に収載されている詩は、どれもヨーロッパの長い歴史を感じさせるようなゆったりとした抒情に満ちています。

 野田が撮影した昭和43年のヨーロッパの写真を、ぜひご覧ください。
 皆様のご来館をこころよりお待ちしております。