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常設展の展示替をしました~「新発見!青木勇の詩稿ノート!?~知られざるその詩の魅力~」~2017年5月

テーマ展示「新発見!青木勇の詩稿ノート!?~知られざるその詩の魅力~」

 2017年5月1日より、展示を入れ替えました。
 今回は、新収蔵品「青木勇の詩稿ノート」のお披露目ということで、知られざる詩人・青木勇(あおき いさむ)にスポットを当てます。

 青木勇(あおき いさむ)は、明治37(1904)年生まれで、久留米を中心として昭和の初期のごく短い期間、活動していた詩人です。文芸誌「街路樹(がいろじゅ)」に参加し、野田宇太郎や丸山豊らと交流しました。青木の詩は、野田によると「超現実的実験の作品」であり、その詩は、野田を含めた詩人たちを興奮させ、大きな影響を与えました。その後、野田宇太郎・丸山豊・俣野衛(またの まもる)・原田春海(はらだ はるみ)・青木勇の5人によって「ボアイエルのクラブ」が結成されます。「ボアイエルのクラブ」は、丸山豊主宰の詩誌「母音」へとつながり、そこからは多くのすぐれた詩人が誕生しました。青木勇は、いわば、筑後の詩の文化の源流ともいえる存在だとする研究者もいるほどです。

 しかし、そのような重要な存在でありながら、青木勇の活動期間は確認されているところでは、昭和5(1930)年~昭和11(1936)年の約6年で、その資料は、ほとんど存在しませんでした。青木の名は、当時青木を知る人物の言葉によってのみ語られてきた部分が大きかったのです。今回、幸運にも、この知られざる詩人・青木勇の詩稿ノートを、野田宇太郎文学資料館では、新収蔵することができました。

 これまで、青木勇の直筆資料がほとんどなかったため、この資料を100%「青木勇のものである」と言い切ることは適切ではないかもしれません。しかし、このノートに収められている内容をいくつも積み重ねて考察した結果、当館では、「青木勇のものである」と判断するにいたりました。

自由日記(青木勇)-表紙.JPG

青木勇の詩稿ノート

 この詩稿ノートには、青木が出版した詩集『酩酊』〈私家版 限定30部 非売品 昭和9(1934)年〉と『どくじゃ』〈私家版 限定50部 昭和11(1936)年〉におさめられている詩を写筆したものや、詩論の他、別ペンネームで発表した詩などが書かれています。青木勇は、いくつかのペンネームを使っていたようなのですが、青木とはっきり特定する根拠に乏しいものもありました。今回、このノートが発見されたことで、これまで青木勇のものだとは分からなかった作品が、青木によるものだということが新たに分かりました。それは、「聯想祭(れんそうさい) 第4輯」〈安西英男 編 昭和7(1932)年2月 大石日出刀〉に掲載されている「ヒトミシロジョー」という人物が発表した「ウンテンシユノハナシ」という詩です。詩稿ノートに同じタイトルの作品が書かれており、ノートの方では、大幅な追加がなされているものの、基本的な内容や詩の構成は同じでした。

 まだまだ、青木勇については、分からないことが多く、今後も調査を続けていきたいと思います。また、青木勇に関する情報や、昭和初期の久留米や筑後の詩誌についての情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どうぞ野田宇太郎文学資料館までお知らせください。

 その他、青木勇の詩をパネルにして紹介したり、「街路樹」をはじめとした昭和初期の詩誌など、貴重な資料を数多く展示しています。今回の展示は、6月18日(日)までです。貴重な機会ですので、どうぞ野田宇太郎文学資料館までお越しください。ご来館をお待ちしています。