野田宇太郎顕彰会 文学散歩のご報告(2016年3月)
漱石と辿る春の久留米路
3月28日(火)に野田宇太郎顕彰会主催の文学散歩「漱石と辿る春の久留米路」を実施しました。前日の雨が嘘のように、当日は晴れて暖かく、絶好の文学散歩日和でした。
良く晴れていました
2017年は夏目漱石生誕150年(生没年:1867~1916)という記念の年です。そこで、今回の文学散歩は明治30(1897)年に漱石が久留米を訪れた際に詠んだ俳句を辿る旅となりました。地元の郷土史家・増原達也さんを講師に迎え、総勢13名でバスは出発しました。
増原さんによると、夏目漱石が久留米を訪れて高良山を登ったのは120年前の3月28日、奇しくも文学散歩当日と重なり、不思議な縁を感じました。
最初に訪れたのは、漱石が「石磴(せきとう)や曇る肥前の春の山」という句を詠んだ高良大社の鳥居です。
高良大社「三の鳥居」
高良大社から向かいの肥前の山が見えます
次は、高良山の公園にある句碑を巡ります。
「菜の花の遥かに黄なり筑後川」
「人に逢わず雨ふる山の花盛(はなさかり)」
「筑後路や丸い山吹く春の風」
久留米市の住宅街の中にも碑がありました。
久留米市山川町
「親方と呼びかけられし毛布哉(けっとかな)」
お昼を挟んで、世界のつばき館と久留米つばき園に足をのばしました。ツバキは、久留米市の「市の木」でもあり、今が見頃を迎えています。つばき館では、世界の原種ツバキ110種以上が展示され、つばき園では約3ヘクタールの広さに500品種、2000本のツバキが植栽されています。
世界のつばき館
つばき館の様子
久留米つばき園
つばき園の様子
珍しい種類のツバキも数多くあり、参加者の方々は写真を撮ったり、時には感嘆の声をあげながら、思い思いに散策を楽しまれていました。
ツバキを鑑賞した後は、桜の名所でもある発心(ほっしん)公園へ向かいました。平年だと満開の桜は、まだほとんど咲いていませんでしたが、ここには夏目漱石も訪れており、句碑があります。
「松をもて囲ひし谷の桜かな」
句に詠まれた桜の見頃はもう少し先のようです
さて、こちらは次に訪ねた老松神社の鳥居です。
漱石の同級生・飯田春畦(いいだ しゅんけい)を訪れた際に「拝殿に花吹き込むや鈴の音」という句を詠んだのではないかと増原さんは推察されています。その拝殿というのが、この老松神社であろう、ということでした。
最後は、菅虎雄(すが とらお)の顕彰碑を目指して梅林寺へ向かいました。菅虎雄と夏目漱石は深い親交がありました。漱石は、久留米に数回訪れており、菅の所へ顔を出すこともありました。明治29(1896)年、久留米の梅林寺に立ち寄った漱石は「碧巌(へきがん)を提唱す内山(やま)の夜ぞ長き」という句を詠んでいます。
梅林寺外苑内「碧巌を提唱す内山の夜ぞ長き」句碑と菅虎雄顕彰碑
写真の右側が菅虎雄の顕彰碑、中央は、二人の友情を表す肖像と彫像です。写真の左側の句碑に刻まれている文字は、漱石本人の直筆で、漱石の直筆の句碑があるのは、九州ではこの碑だけだそうです。
今回ご参加いただいた方の中には、この碑の前の道を通ったけれども、句碑には気づかなかった、とおっしゃる方もいました。探してみると、意外と身近に色々な碑があるかもしれません。これから、暖かくなり、緑も芽吹き、散歩には最適な季節です。皆さんもぜひ、自分なりの"文学散歩"を楽しまれてみてはいかがでしょうか。
今回の文学散歩にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
文学散歩「漱石と辿る春の久留米路」資料
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